鶏卵肉情報 進化するブランド

2017年12月25日号

◎(株)落水正商店
弾力ある黄身、深いコクと上品な甘み
おいしさ、健康にこだわった「太陽卵」


卵かけご飯が食べたくなる、弾力ある黄身。深いコクと、上品な幅のある甘み――。おいしさ、安全・安心、健康にとことんこだわった「太陽卵」は、島原半島を拠点に鶏卵一筋、創業70年の信頼と実績を持つ(株)落水正商店(落水日朗社長)が約30年前に開発、県内はもとより北海道から鹿児島まで、全国に多くのファンを持つロングセラー商品である。

太陽卵の開発は、創業以来、鶏卵卸を生業としていた同社が養鶏事業に参入する際、創業者の「昔庭先で飼っていた鶏が産んだ卵の味をもう一度味わいたい。お客様にもあのおいしさを…」との思いを叶えたいと考えたのがきっかけだ。農場を作るために、先代は養鶏先進国の米国を視察。放し飼いでは安全・衛生・品質面の問題がクリアできないと、高床式の開放鶏舎を採用し、鶏を地面から離して飼うことにした。

試行錯誤を重ね、鶏にとって理想の栄養バランスを研究する中で、太陽卵専用の指定配合飼料をベースに、30数種類の天然素材をブレンドした独自のオリジナル飼料を開発。落水社長は「さまざまな食材を理想のバランスで食べると、幸せな気持ちで満たされ、体のバランスも保たれる。それは鶏も同じこと」と語る。太陽卵は、通常卵に比べてビタミンEを10倍、ビタミンAを約2倍多く含んでいるが、同社では外部の分析機関で定期的に検査を行い、ビタミンEについては年間を通じて最も理想的とされる「含有量10倍」(対通常卵)を保証している。



2017年11月25日号

◎坂本養鶏(株)
鮮度が第一「きみちゃんのもっこりたまご」
蓬田村の良質な地下水をさらに浄化して給与


インパクト満点のネーミング「きみちゃんのもっこりたまご」。名前の由来はそのものズバリ、黄身の盛り上がりにある。

生産する坂本養鶏(株)(青森県東津軽群蓬田村)の新社長に就任した坂本佐祐氏は「もっこりたまごはハウユニットの高さが最大の特徴なので、鮮度が第一。そのためには温度管理と在庫管理が欠かせない」というが、最も大切にしているのは鶏が飲む水だ。

同社の前社長で現顧問の坂本佐兵衛氏は鶏の体の60%を構成する水に着目し、改良に取り組んでいた。本社と農場がある蓬田村は、もともと地下水の質の高さが専門家の間で評価されていた。その地下水に磁気作用を加えることで水分子を細かくしてから鶏に給与している。

高品質の水と飼料を給与した健康な鶏が生む「きみちゃんのもっこりたまご」は平成10年の発売以降、黄身の盛り上がりとさっぱりした白身で「一度食べたらまた食べたくなる」などと評価され、同社の看板商品に育った。



2017年10月25日号

◎(株)後閑養鶏園
コク深く甘みのある「千代の厳選卵」
厳選した天然素材を純国産鶏に給与


「命と健康・美味しさを求めて」をモットーに、純国産鶏のもみじとさくらで「千代の厳選卵」を生産する(株)後閑養鶏園(前橋市、後閑希代一社長)。赤城南麓の澄んだ空気を取り込んだ開放鶏舎で1万羽のうち2500羽を平飼いしているが、最も重視しているのは厳選した飼料だ。

飼料はnon-GMOでポストハーベストフリーの指定配合をベースに、ミネラルとしてのカキ殻やカニ殻、タンパク質としての魚粉やゴマ、きな粉などの天然素材を、季節や鶏の日齢を考慮しながら自社で配合。しかも、魚粉は「CP65のもの」(取締役の後閑修司氏)というように、原料の一つひとつを徹底的に“厳選"している。その上で「良さそうなものがあれば10羽ずつの単位で試験している」(後閑氏)というように、常により良い飼料を追求している。



2017年9月25日号

◎(株)岩沢ポートリー(神奈川県横須賀市)
地元の恵みを生かした「姫様のたまご」
平飼いの鶏にマグロや海藻などを給与


「こんなにおいしい卵、食べたことがない」。これが買って食べた顧客の声なら珍しくないが、この感想は発売前に一カ月間、新開発のブランド卵を食べ続けた従業員のもの。「うちってこんなにおいしい卵つくってるの?」という声も上がった「姫様のたまご」には、(株)岩沢ポートリー(神奈川県横須賀市)の岩澤剛社長と全従業員の強い思いが詰まっている。

岩澤氏は今から10年以上も前、「津久井にはみかんやイチゴ、芋掘りなどの観光農園がある。ただ、農作物は季節によってできないものもあるので、一年中とれる卵を使って卵拾い牧場ができれば」と考えていた。 「ただの平飼いでは面白くない。地元だからこそできることをしよう」と、三浦半島で採れた野菜や、海に近い立地を生かしたミネラルたっぷりの海藻、三崎マグロの粉末など、地元ならではの飼料を開発した。

こうして誕生した「姫様のたまご」は甘くコクがあり、生臭さがなく、卵のプロである同社の従業員ですら驚くほどの味になったという。



2017年8月25日号

◎(有)デイリーファーム
農家直送、循環型の米たまご「明日」
耕畜連携で地域の田圃と農業を守る


中部空港から車で約30分。伊勢湾を臨む自然豊かな丘にあるのが(有)デイリーファーム(愛知県常滑市、市田真新社長)の農場だ。

同社は「たまごで人をしあわせに」という経営理念を掲げ、大正末期の創業以来、地域とともに歩んできた。しかし、後継者不足などで農業が衰退する状況に危機感を抱いた市田氏は「地域の農業と田圃を残していかなければならない」として、約10年前から飼料用米を使った「あいちの米たまご」の生産を開始した。

当時はまだ政府による補助もなく、すべてが手探りの状態。市田氏も「鶏ふんも使ってもらえないし米は飼料原料としては高すぎるしと、とにかく大変だった」と振り返る。それでも続けてきたのは「おこがましいけれど、我々畜産農家が耕種農家と一緒になって地域の農業を守りたいという強い思い」があったからこそだ。

その結果として今、「あいちの米たまご」はコープあいちの看板商品の一つに育ち、稲作農家と畜産農家の連携による循環型農業も回り始めている。

市田氏は「米たまごを産む鶏は一年間に米を約7キログラム食べる。米たまごを食べることが地域の田圃を守ることにつながる」として、今後もこの取り組みを続けていく方針だ。



2017年7月25日号

◎千葉エッグファーム(有)
CF16の“濃厚すぎる”「美味たま」
写真に映えてブログに書きたくなる卵


通販サイト大手のAmazonで「濃厚すぎる卵」「道の駅で売切れ必至」などと紹介されているのは、カラーファン(CF)16という濃厚な卵黄の「美味たま」だ。生産する千葉エッグファーム(有)(千葉県香取市、田邉淳一社長)では、ビタミン強化卵用の特殊な飼料をベースに、さらに自社でファフィア酵母とアスタキサンチンを添加している。飼料代は「ちょっと高い」(農場長の山口隆史氏)が、Amazonでは写真映えする見た目のインパクトから「ブログに書きたくなる卵」と評価され、ユーザーからは「割った時に黄身の色に感動しました」というコメントが寄せられている。

とはいえ、美味たまの特徴は見た目だけではない。山口氏は「特別な管理をしているわけではない」というが、手間とコストを掛けた飼料によってビタミンEを一般の卵の10倍含み、卵黄色と同じく濃厚でしっかりした味の卵になっている。



2017年6月25日号

◎石川養鶏場
北海道産トウモロコシで旨味成分を向上
羊蹄山の麓で生まれる「ぷるっとたまご」


北海道を代表する名山・羊蹄山の麓で「ぷるっとたまご」を生産する石川養鶏場(倶知安町、石川尚基代表)。きれいな空気、おいしい湧水という恵まれた自然環境の中で、石川氏が研究を続けているのが地元産の飼料だ。

「できるだけ自然に近い状態のものを鶏に提供する」という信念の下、これまでのnon-GMOトウモロコシのほか、昨年からは北海道産のトウモロコシを導入した。国産飼料による自給率の向上や循環型農業による地産地消といった理念に加えて、採用の決め手になったのは「同じ栄養価の原料でも、鮮度の高い近くのものを食べた鶏は力が違う」という石川氏の思いと科学的な根拠だ。

それまでも、イワシなどの青魚を中心とした高CPの魚粉、発酵処理した魚粉、大豆粕、ワイン粕など、「卵にどれだけ味が乗るか」をテーマにさまざまな技術と材料を取り入れてきたが、道産トウモロコシを使ってからは旨味成分が一般卵の300%にまで向上したという。



2017年5月25日号

◎グリーンファーム
鹿沼産米配合の「かぬまの真珠卵」
国内産中心の飼料で自給率の向上を


飼料用米を給与することで卵黄色が白くなるのを補うためパプリカなどで調整する生産者も多い中、栃木県鹿沼市のグリーンファーム(梅園茂代表)は敢えて白い卵黄を前面に打ち出し、平飼いの「かぬまの真珠卵」としてブランド化を図っている。

もともとは、「田圃でとれた米を鶏に食べさせ、鶏から出たふんを田圃に戻す」という循環型養鶏を目指していた同じ鹿沼市の岩出正行氏が始めた取り組みで、「可能な限り国産飼料で養鶏をしたい」と考えていた梅園氏が共感し、鹿沼産米を中心とした飼料体系での鶏卵生産が始まった。飼料には米のほか、麦、ふすま、ぬかなどを自家配合している。

販売当初は白い黄身が敬遠され、「気持ち悪い」や「味が薄そう」などと顧客からの反応も散々だった。しかし、米ぬかに含まれる成分が移行することで真珠卵にはビタミンEが一般卵の2倍、旨味の基であるオレイン酸も豊富に含まれるなど、味と栄養が評価され、販路は徐々に広がっていく。特にスイーツでは白い卵黄が逆に「加工しやすい」と評判を呼び、真珠卵を使ったプリンは店舗展開を拡大している。



2017年4月25日号

◎(有)昔の味たまご農場
卵白のコシが強い「昔の味たまご」
料理の美味しさと仕上がりを考える


「生で美味しいのは当然。料理の仕上がり、それが自慢です」。卵のパックにも直売所の看板にも、個性的なイラストとともにそう紹介されている「昔の味たまご」。生産する(有)昔の味たまご農場(神奈川県相模原市)の田中紘社長の息子である亮氏は「料理後の美味しさや仕上がりの良さまで考えて生産している」という。

東京・神谷町のイタリアンレストラン「トスカーナ」などを展開する(株)イタリアンイノベーションクッチーナの四家公明社長が「卵白のコシと香りがほかの卵と比較して圧倒的に強い。それにより卵黄のコクが引き立ち、料理の味をぐっと良くしてくれる」と評価しているように、「琥珀色をした卵白のコシがさまざまな料理の味を引き立てる」(田中亮氏)。琥珀色なのは、卵白にビタミンBが多く含まれているため。

白身のコシの強さを示すちょっと珍しいエピソードは「コンソメづくりに失敗しない」というもの。亮氏は「コンソメは野菜などの具材を細かく刻んで卵白で固めるのだが、その際、卵白のコシが弱いと崩れてしまう。しかし、昔の味たまごは水溶性卵白が少なくコシが強いため、フレンチの料理人から『これに替えてからコンソメづくりに失敗がなくなった』といわれた」と説明する。



2017年3月25日号

◎紀州うめどり・うめたまご協議会
梅干しを活用した「紀州うめたまご」
梅酢を配合し鶏の腸内環境を整える


梅干しの生産量が年6万トンと全国の6割を占める和歌山県。梅干しは和歌山が誇る特産品の一つだが、紀州南高梅の産地・南部町では、梅干しづくりの過程で出る梅酢の処理に悩まされていた。そこで、夏場に弱った鶏に梅酢を飲ませるという地域独特の風習を生かし、飼料に梅酢を配合して誕生したのが「紀州うめどり」と「紀州うめたまご」だ。

梅酢のエキス「紀州梅そだち(梅BX70)」を配合した飼料と鶏の健康との関連性を和歌山県畜産試験場養鶏研究所で調査したところ、クエン酸やリンゴ酸、ポリフェノールなどの有機酸を豊富に含む梅酢は鶏の腸内環境にも好影響を与えることが確認されたという。 これを機に、和歌山発のブランド鶏肉とブランド鶏卵をつくろうと2006年に生産者らで組織されたのが紀州うめどり・うめたまご協議会。事務局を務める中田直希氏((有)中田鶏肉店専務)は「うめどりもうめたまごも、梅干しの消臭効果で臭みが非常に少ない」という。



2017年2月25日号

◎伊藤忠飼料(株)
投書箱に「ぐでたま置いてください」の声
人気キャラとコラボで、卵売場に季節感を


サンリオの人気キャラクター「ぐでたま」。いかにもやる気がなさそうな、ぐで〜っとした卵の不思議なキャラクターが登場したのは、同社が2013年に開催した投票企画「食べキャラ総選挙」。総選挙では2位を獲得し、2014年にTBS系の朝の情報番組「あさチャン!」の番組内ショートアニメに登場するや、たちまち20代、30代の若い世代を中心に注目を集め、2016年夏に行われた投票企画「サンリオキャラクター大賞」では4位入賞を果たすなど、現在も高い認知度と支持を得ている。

伊藤忠飼料の「ぐでたま」が、数多のキャラクター商品と違うのは、卵そのものの商品力と企画・提案力だ。同社は「鶏卵は商品の改廃が少ない上、シーズン商材も存在しないため、1年を通して変化に乏しく、季節感がない」として、卵売場の活性化をコンセプトに「ぐでたまを四季(イースター、土用の丑、ハロウィン、クリスマス)の期間限定パッケージで展開すること」を提案。おまけのぐでたまシールやパッケージ、キャラクター自体の人気も相まって、販売は初年度から毎月右肩上がりで伸びていったという。



2017年1月25日号

◎大木養鶏場
見た目のブランド戦略と濃厚な味わい
HE-BARA NO MEGUMI


直売所の看板や化粧箱にデザインされたオレンジ色は、15を超えるという濃厚なカラーファンをイメージしている。「見た目も大事なので」という大木孝一氏が代表を務める(川崎市)のブランド卵「HE−BARA NO MEGUMI」は、農場のある川崎市菅生ヶ丘がかつて「稗原(ひえばら)」という地名で、地元の人が「へぇーばら」と呼んだことにちなんでいる。以前は「へぇーばらの恵み」と称していた卵を、大木氏が「世界的な某有名ブランドのロゴを意識して」アルファベット表記に変更した。見た目を重視した形だが、化粧箱入りの贈答用卵の販売拡大につながるなど、こうした姿勢は一つのブランド戦略になっている。

29歳で家業を継いだ大木氏は「カッコよく農業をしたい」としてブランド戦略を進め、直売所を兼ねた作業所もガレージ風に改装するなど、見た目のイメージを重視してきた。しかし、学生の頃に食べた月見うどんがきっかけで卵が食べられなくなった経験を基に「最高の卵を自分でつくりたい」という思いから、鶏種や飼養方法などの研究を続けてきた結果、HE−BARA NO MEGUMIは今では多くの人々に支持されるブランドにまで成長した。



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