2009年12月号
◎有限会社仁光園(富山県)・株式会社フードネクサス(東京都)
“卵かけご飯専門店”をフランチャイズ展開へ
東京・日比谷に「たまごん家」1号店をオープン
〜HACCP認証取得農場で生産された安全・安心の卵を提供〜


全国的に再評価が進む卵かけご飯の専門店「たまごん家(ち)」1号店が10月10日、東京・日比谷の一等地、帝国ホテルタワーの目の前にオープンした。店舗を運営するのは外食ベンチャーの株式会社フードネクサス(本社東京、朝山良夫社長)で、北緯35度≠ノ位置した日本人の体に合った、伝統的な食≠フ復活を目指し、全国の横の絆を深めようと事業化した。11月にはフランチャイズビジネスの事業説明会を計画しており、まずは東京都内を中心に店舗展開したいとしている。

「朝はご飯を食べる習慣をよみがえらせたい。この思いで(たまごん家の)事業展開を決意した。朝食は一日の中でもエネルギーの燃焼効率が良く、良質のタンパク質や炭水化物を接取するのに最適。朝食をしっかりとることは規則正しい食生活につながり、健康にも役立つ。「たまごかけごはんセット」では海苔と味噌汁(海藻入り)も一緒に提供し、不足しがちな栄養素を補う工夫もしている。また、夜は若い人たちでも気軽に来ていただける安価な居酒屋を併設し、昔ながらの魚料理、野菜料理を中心に提供する。お酒を飲みながら知らない人たちが知り合い、楽しく語り合える場として“閉塞的な縦社会から絆を大切にする横社会の復活”を目指したい」と、朝山社長は事業設立への思いを語る。

このプロジェクトのもう一つの視点は、伝統的な食≠フ復活を目指す農・水・商・工の連携である。卵かけご飯になくてはならない米は、長野県木島平の生産者グループが雪深い北信州のブナ林から流れる樽川、馬曲川の清流で育てたこしひかり「一番開花」を採用。「一番開花」は食味値が高い、早く咲く花の粒だけを厳選し、付加価値の高い米として流通している。海苔は、熊本県漁連が新開発した「まる干し粒海苔」を使用。海苔の原藻を丸のまま乾燥させたため、細胞が壊れず、旨みエキスや栄養素が多く残り、人の体に必要なビタミン、ミネラル、食物繊維が多く含まれている。板海苔では味わえないサクサクとした食感はとても食べやすく、卵かけご飯との相性も抜群だ。

鶏卵は、富山県の採卵養鶏場、有限会社仁光園(島哲雄社長)のプレミアムたまごを採用した。同社は2008年6月、養鶏場としては日本で初めてSGSジャパンの農場HACCP認証を取得。徹底した衛生管理の下、食中毒の原因となるサルモネラ菌対策に万全を期すとともに、香港にも継続的に鶏卵を輸出している。鶏のストレスを軽減し、自己免疫力を発揮させるために密飼いをせず、自然光や風を取り入れる開放鶏舎でゆったりと飼養。生産農場は隣接農場から直線距離で10キロメートル以上離れており、同業他社からの鳥インフルエンザなど悪性伝染病の水平感染を防いでいる。飼料は非遺伝子組換えのトウモロコシ、大豆粕を主体に、酒米糖も使用して旨みを高めている。仁光園のプレミアムたまごは、さらに抗酸化作用のあるビタミンEも含有。250〜350日齢の若鶏が産んだ鶏卵に限定しているため、新鮮で張りのある白身、色濃くしっかりした黄身が特徴で、懐かしい昔の卵の味を再現している。

卵かけご飯専用醤油「たまごにイイ醤(ジャン)」は、卵に合う味を独自に研究されたもの。化学調味料などの添加物を一切使用せず、塩分控えめの天然昆布だしをベースに製造したものを提供している。

朝山社長は「今の流れを変えようと、全国各地でさまざまな取り組みが見られる。私たちが目指す正しい食ビジネスは、より自然に近い、化学的な加工をできるだけしない食材を使い、しかも適正価格でお客様に提供することだ。私は昨年まで大手スーパーで98円の卵を売っていた。しかし、それではお客様の信頼を得ることはできないと悟った。安全性が一番の価値である」と力説。鶏卵を供給する仁光園の島哲雄社長は「東京都内に新たな販路ができたことは大変喜ばしいが、それ以上に、当社のこれまでの安全・安心な鶏卵生産に対する取り組みを高く評価していただけたことが嬉しい。たまごん家の理念にも大いに共感している」と述べている。 。




 
2009年11月号
◎日本モンサント株式会社(東京都)
ノンGM作物との差歴然 技術開発進むGM作物


米国ミズーリ州セントルイスに本部のある「モンサント・カンパニー」は、南北アメリカ、ヨーロッパ・アフリカ、アジアパシフィックなど61カ国に事業拠点を配し、農業関連製品事業、種子の開発、改良、販売事業(交配育種、マーカー育種、遺伝子組み換え法)などを中心に、年間113億6500万ドル(種子事業:63億6900万ドル、農薬事業:49億9600万ドル)の売上を誇る。日本モンサントはその日本現地法人として1957年に設立され、GM作物の認可・申請、遺伝子組換え作物の情報提供、さらにはイネ新品種の開発(とねのめぐみ=「コシヒカリ」と「どんとこい」を交配した新品種)などの事業を行っている。

商品化・流通している主なGM作物の一つである「ラウンドアップレディー(RR)作物」は、特定の除草剤、つまり「ラウンドアップ®」を散布すると、それに耐性を持つRR作物は枯れずに、雑草だけが枯れるため、雑草防除が容易になり、薬剤の散布回数も減少し、また不耕起栽培などを通じ、環境負荷の低い農業を実現(土壌流亡の防止、CO2排出の削減)することができるというのが特長。その代表的な作物が今回の見学会でも披露された「RR大豆」である。

またもう一つは、作物自身が害虫への抵抗性を持ち、殺虫剤の使用量を減らせる「害虫抵抗性作物(Bt作物)」で、殺虫剤の散布回数の減少、残留農薬リスクの低減と同時に、害虫被害の抑制を通じ、カビ毒(マイコトキシン)発生リスクの低減(フモニシン、アフラトキシン、ゼアラレノンなど)や害虫の被害を抑え、安定した収量が確保できる。こちらも今回の見学会で披露された「Btトウモロコシ」がよく知られている。

見学に訪れた茨城県・河内町にある日本モンサント研究農場の隔離ほ場では、「Btトウモロコシ」と「RR大豆」が試験栽培されているが、(1)部外者などが侵入して試験中の植物などを場外に持ち出さないようにほ場周囲をフェンスで囲むこと、(2)GM作物の種子や安全性の認可の最中の種子などが靴の裏に付着して持ち出されることのないように靴の洗い場を設けること――という隔離ほ場としての基準を遵守している。

隔離ほ場で栽培されているトウモロコシは、一般的に飼料用として利用されている「デントコーン」にBtタンパクを組み込み害虫抵抗性を持たせたもの(米国などで「MON810」という品種で販売)と、比較のためにノンGMのもので、ともに6月1日に播種し、同様の方法で無農薬栽培されている。

その生育状態の差は歴然で、ノンGMトウモロコシの方は害虫(アワノメイガの幼虫)に食い荒らされ、背丈がまばらで先端部分が枯れているのに対して「Btトウモロコシ」は、害虫に食い荒らされず、背丈が揃っている。実が害虫に食われると、そこから水が侵入しカビ毒発生の原因ともなる。

Btとは、バチルス・チューリンゲンシスという土壌細菌で、この細菌は昆虫だけを殺すタンパク質「Btタンパク」を作り出し、その遺伝子をトウモロコシに組み込んだのが「Btトウモロコシ」である。Btトウモロコシをアワノメイガなどの特定の昆虫が食べるとBtタンパクにより餓死する。これは虫の消化液がアルカリ性のためにBtタンパクが完全に消化されず、残ったBtペプチドがアワノメイガなどの昆虫の腸管にある受容体と結合して、栄養素を吸収できなくするためである。これらの昆虫と違って消化液が酸性である人間やほ乳類は、Btタンパクを他のタンパクと同じようにアミノ酸にまで分解し、また、受容体を持っていないので、食べてもまったく害がない。消化器官の違いをうまく利用した遺伝子組み換え技術により、使用する農薬・殺虫剤の量が削減でき、収穫量を増やすことができるというわけである。

有効成分であるグリホサートという物質は、植物が持っている特定の栄養(芳香族アミノ酸)を作るのに必要なEPSPS(5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素)という酵素を阻害し、植物にアミノ酸を作れなくして枯らせる。モンサント・カンパニーはアグロバクテリウムという微生物がこのグリホサートの影響を受けない「CP4 EPSPS」というタンパク質を作る遺伝子を持っていることを発見し、その遺伝子を作物に組み込むことで、グリホサートに耐性を持った作物を開発することに成功したのである。

このEPSPS酵素は植物や微生物だけが持っているものなので、もともと酵素を持っていない人間や動物に対してグリホサートは作用しない。そのため、「ラウンドアップ」は日本でも農薬などの指定を受けておらず、ホームセンターなどで肥料などと同様に購入することができる。

モンサント・カンパニーでは、さらに収量を上げるために、1株に3粒入りの鞘と種実を作る「Roundup Ready2 Yield」という品種の商業栽培(100万〜200万エーカー)を2009年から米国内で始めており、今後その量を増やしていくという。さらに2012年の商業栽培を目標に、乾燥ストレス下でも結実する乾燥耐性トウモロコシ「DROUGHT TOLERANT CORN」の研究開発を進めている。

GM技術により飼料穀物の生産が潤沢になり供給が安定すれば国際価格も安定し、畜産農家などにとっては大きなメリットとなる。さらなる技術開発に期待がかかる。




 
2009年10月号
◎株式会社フードサプライジャスコ・中部センター(愛知県)
SQF2000準拠の品質管理で“安全・安心・美味しさ”を徹底追求
〜安全・安心を最優先課題に、“美味探究”でブランド力を強化〜


畜産・水産・デリカ商品などの製造加工、並びに農産・加工・デイリー商品などを含めた配送を主業務とする株式会社フードサプライジャスコ(本社・千葉県船橋市高瀬町24−12、佐々木勉代表取締役社長、1981年設立)は、安全・安心・高品質の食品を顧客に提供することを目的として、SQF2000に基づく品質保証体制の確立・運用に取り組んでいる。同社は2003年8月に兵庫センターで認証を取得して以降、社内におけるSQF2000の水平展開を推進してきた。

取締役製造担当兼中部センター長の都筑氏は「中部センターとしては、すでにSQF規格に準じた品質保証体制の構築に取り組んでいたので、「認証取得の何か特別な準備をした」という感じはなく、むしろ「これまでの取り組みの延長線上で取得できた」という印象がある。SQFに取り組んで、会社は良い方向に変わったと感じている。「品質を大事にする」という当社の社風と、SQFという仕組みが、上手くマッチしたからだ。SQFに取り組んだことで、品質管理に関する「明確な基準」が決められた。基準が明確になったので、その基準を守るための「手順」を作成することになった。そして、その手順を効率よく実践するために、各現場がさまざまな工夫を凝らしてきた。そうなると、安全性や品質管理が向上するだけではなく、生産効率の改善といった副次的効果もあらわれてきた。品質管理と生産管理は、車の「両輪」である。品質が良くなると、生産面にも良い影響をもたらす。生産効率を上げようとすれば、結果として品質が良くなる。

当社の品質管理部は、以前はセンター長の管轄下の組織だったが、現在は社長直轄の組織にとなっている。現場から完全に独立した立場なので、現場や会社に対して第三者的に意見や提案ができる。これは非常に大きな変化だったと思う。毎月9日を「異物混入防止の日」、25日を「表示の日」と定めている。この日は、過去に当社が大きな事故を起こした日だが、朝礼時に改めてルールを再確認するなどして、過去の経験を繰り返すことがないよう、自らを戒める日としている。

また、高いモチベーションを維持してもらうため、「目標管理」を導入している。異物混入率や毛髪件数など、数値化できる目標については「全社の目標値」や「センターの目標値」を掲げている。目標の達成度を客観的に確認することで、常に「現状の管理手法で良いのか?」という見直しができる。異物混入については、数値による目標管理を始めた頃(2003年頃)と比較して、現在は約6分の1まで減らすことができた。具体的な数値を示して「見える化」したことが顕著な成果につながったのだと思う。数字で管理するようになったことで、お客様に対しても、具体的にどのような異物が何件見つかり、それに対してどのような対策を講じ、その効果がどのようにあらわれているか、といった具体的な説明ができるようになった。

SQFという仕組みは、監査を行うたびにレベルアップする。監査を軽視すると、せっかく仕組みを構築したのに、気が付いたら(仕組みのレベルが)後退していた」ということにもなりかねない。確実にレベルアップするためには、「監査の意義」をしっかりと理解することが大切である。最近は、監査員や審査員の方には「現場のありのままの姿」を見てもらい、どんどん指摘をしてもらうようにしている。また、新しい取り組みとして、「これまでとは違う視点からも監査してもらいたい」という考えから、受託検査機関に半年に1回の頻度で「一般衛生管理」の部分に焦点を絞った監査を依頼している。積極的に「第三者の目」を受け入れるように心掛けている。」と語る。

品質管理部長の間處氏は「当社では、食品製造において最も重要なことは「美味しさを含めた品質管理」であると考えている。お客様からのクレームの原因を分析すると、その多くが「品質クレーム」である。SQFに取り組み始めて、お客様からのクレームは確実に減少した。加工場に潜んでいる潜在的な商品事故や品質不良も、しっかりとコントロールできて、事故予防につながっている。当社では、「安全・安心の確保」を徹底した上で、さらなる目標として「美味探究」という取り組みを掲げている。「美味しい食品を提供する」という目標は、品質管理部門の取り組みだけでは実現できない。もちろん、製造部門だけ、商品開発部門だけでも実現できない。品質管理・製造・商品開発などの各セクションが、一つのチームとなって連携し合うことで、初めて実現に向かうものである。チーム一丸となって「美味探究」という取り組みを行い、製造現場で行うSQF2000のCQP管理につなげていくことが重要である。

表示の管理も、品質管理部の重要な業務である。最終製品にどのような表示をするかは、原材料の仕様書に基づいて品質管理部が決定する。また、入荷された原材料の仕様書と、実際の入荷品が一致しているかどうかの確認も管理している。

教育では「現状をわかりやすく伝える」ということが大切で、単に「ローラー掛けができていません」というよりも、「ローラー掛けの後のエアシャワーでこれだけの毛髪が取れています」といったように「できていない度合い」を「見える化」する方が、説得力は増すようだ。

今後は、もっと“ブランド化”の取り組みを強化し、我々の「美味探究」という考えを、より多くの消費者に知っていただきたい。そして、より多くの方に「フードサプライジャスコの商品を買いたいから、今日はイオンで買い物をしよう」と思ってもらえるようにしたい。そのような「ブランド化」や「差別化」を図っていく上で重視すべきは、やはり「美味しさ」だろう。「美味しい食品」を提供する上で、SQF2000というツールは大いに役に立っている。これからも妥協することなく「美味しさ」を探し求めていきたい。」と語る。




 
2009年9月号
◎フレンチ・エフ・アンド・ビー・ジャパン株式会社(東京都)
フランス食材の貿易・輸入商社がISO22000認証取得
〜ISO22000だからこそ問われる職人としての“気概”と“技術”〜


フランス料理食材、製菓材料、ワイン、その他各種料理食材の輸入販売を主業務とするフレンチ・エフ・アンド・ビー・ジャパン株式会社(東京都品川区荏原、フレデリック・モラン社長)は6月24日、ISO22000認証を取得した。認証の登録範囲は「フランス料理食材、製菓材料、ワインの輸入仕入、卸およびチーズの加工」、審査登録機関は株式会社日本環境認証機構(通称「JACO」東京都港区赤坂)、構築支援を手掛けたのは株式会社名南経営(愛知県名古屋市東区)、貿易・輸入専門商社がISO22000認証を取得した初の事例である。

同社は、世界的な食品企業グループであるヴェスティ・フーズ・グループの関連企業として2000年に設立(1980年創業)した。主にフランスから食品・食材などを輸入し、国内のレストラン、ホテル、フードサービス、小売業者などに供給している。

同社ISO担当マネージャーの田中耕一郎氏(同氏は食品安全チームのリーダーも務めている)は、『ヴェスティ・フーズ・グループは商品の特性に合った厳しい品質管理の下、高品質かつ安全性が確保された食品をホテル業界やレストラン業界などに提供しております。そのため、以前からISO22000に対しては関心を寄せており、3年ほど前から「グループの関連企業はISO22000に取り組んだ方がよいのではないか?」という議論が行われておりました。

日本は「モノ作り」において、世界で最も優れた国の一つとして評価されており、そのことは、日本人が世界に誇れるものだと思います。しかし、そのように日本人が「モノ作り」に懸けてきた「気概」や「職人気質」は近年、日本企業よりもむしろ外国企業が気にかけている度合いが大きいのではないかと感じることがあります。「信用はお金では買えない」という信念は、今や海外企業の方が強く認識しているのではないか、と思うことさえあります。このたびISO22000という「ツール」の導入に取り組む中で、日本企業が長きにわたり受け継いできた精神――「信義」や「気概」といった感情を、改めて日本企業も見直すべきではないかと感じるようになりました。

永続的な企業経営の発展には、そのような精神の下で日常活動を進めることが重要であると再認識しました。食品企業において、「次の世代に職人の良き精神を継承する」ということは、非常に大切なことです。海外では、今でもクラフトマンシップやマイスターと呼ばれる職人が活躍しています。日本では「匠」と呼ばれる人たちですが、今は日本の食品企業から「匠の精神」「匠の技術」が失われつつあるのではないかと危惧します。先輩方が次の世代の後輩たちに、自分たちが生きてきた会社の歴史や良き伝統を、衛生面・技術面・精神面ともに継承していかなければなりません。その「良き継承」は消費者が求める「食の安心・安全」に寄与することと強く思います。

いずれにしても、ISO取得後の継続的改善では現場で行動をともにすることが大切だと思います。その中でより良き仕組み作りを現場の「知恵」をかりながら進めたいと考えています。

プロフェッショナルとは、「職人」としての気概と誇りを持ち、それを表現する技術を持つ人たちだと思います。海外メーカーが気概と誇りを持って製造した最高の食材を、「最高の食材を、最高の技術で調理する」という気概あるプロの料理人にお届けする――そのためのISO22000として活用していきたいと思います。』と語る。




 
2009年8月号
◎株式会社白洋舎(東京都)
白洋舎がFOOMA JAPAN(国際食品工業展)初出展
〜ユニフォームレンタル事業をPR、来場者の関心集める〜


総合クリーニング企業として知られる株式会社白洋舎(東京都渋谷区、五十嵐素一社長)でも、食品工場や外食産業など食品業界を対象としたユニフォームのレンタル事業を展開している。同社は6月9〜12日に東京ビッグサイトで開催されたFOOMA JAPANに出展し、ユニフォームレンタル事業などの紹介を行った。

レンタルユニフォーム事業は、同社が長年にわたるクリーニング事業の中で培った技術・信頼・実績を活かして作り上げた仕組みである。ユニフォームの素材の選定、デザインの決定、クリーニング、在庫管理に至るまで、ユニフォームに関わる一切の作業を請け負っている。食品企業のニーズ(衛生管理レベルの維持・向上、経営の効率化、ブランドイメージの構築など)に的確に応える事業として、食品工場や外食レストランの厨房、コンビニエンスストアなど、多くの現場で導入されている。

バーコードラベルやICチップには、ユニフォームのサイズ、素材、部署、個人識別番号、氏名などの基礎情報の他、クリーニング回数や入出庫の履歴など、さまざまな情報を集積することができる。バーコードラベルやICチップから読み込んだ情報を、同社のコンピュータに記録することで、メンテナンス管理・在庫管理などを確実に行うことが可能となった。

デジタルデータで管理できることから、「実際のクリーニング回数」と「理論上のクリーニング回数(理想的なクリーニング回数)」を比較することもできる。実際のクリーニング回数が、理論上のクリーニング回数を著しく下回っている場合は、ユニフォームの運用管理に問題が発生している可能性がある。あるいは、「過去に80回クリーニングしたから、生地が限界なので交換する時期だ」といった管理も容易にできる。

同社レンタル事業本部営業係長の菊池雄太郎氏は「食品業界ではシビアな衛生管理が求められるようになっており、その傾向はユニフォームのクリーニングの分野にも及んでいる。例えば、コンビニエンスストアチェーンの中には、商品を納入するベンダーに対して『業務洗濯を利用してください』と推奨しているところもある。従業員の自宅でユニフォームを洗濯させている企業もあるが、家庭洗濯と業務洗濯では大きな違いがある。例えば、洗濯の効果は、水の温度と洗剤の種類が大きく影響する。業務洗濯は約60〜70℃の水温で行うが、家庭洗濯機ではその温度で洗濯することは難しい。乾燥も、業務洗濯の場合、乾燥機なら約110℃、スチームトンネルなら約120℃で、確実な乾燥作業も実施できる。また、煤(すす)のような汚れは、強い機械力で叩き落とす工程が必要だが、この工程も業務洗濯であればきちんと行うことができるが、家庭では難しい。きちんと加熱条件や使用する洗剤が決められているので、微生物の殺菌も確実に行われる。『家庭での洗濯と業務洗濯では、洗濯の質がまったく違う』ということは、今後、食品関係者が持つべき知識として普及・啓発を図っていきたい」と説明する。

菊池氏は、同社のユニフォームレンタルを導入するメリットについて「使用状況をデータ管理しているので、常に衛生的なユニフォームを使用することができる(支給や洗濯がきちんと行われているかどうか管理することは、食品企業において重要な管理項目である。)レンタルユニフォームは初期投資(購入費用)も不要なので、コスト面でのメリットも大きい。ユニフォームの使用枚数が多い施設からは『管理の手間が省けて、しかも衛生的なユニフォームを着用できる。いったんレンタルユニフォームにしたら、以前のようには(ユニフォームを購入する仕組みに)戻せない』という感想も聞いている。ぜひ一度、レンタルユニフォームのシステムを利用してみてほしい」と語る。




 
2009年7月号
◎尾鷲(おわせ)物産株式会社(三重県)
徹底的な“顧客志向”を追及し、“魚のジャスト・イン・タイム納入”システムを確立
〜SQF2000認証取得で安全性確保・品質管理の継続的改善を図る〜


水産物(ブリやハマチ、カンパチ、サーモンなど)の加工・販売を主業務とする尾鷲物産株式会社(三重県尾鷲市、小野博行代表取締役)は、昭和47年に創業。その後、昭和61年に「加工センター」、平成17年に「林町工場」を竣工した。加工センターではサーモンのフィレ・ロイン・スライス加工、林町工場ではブリ・ハマチ・カンパチのフィレ・ロイン加工などを行っている。

同社は、平成13年にはISO9002認証を取得(同16年にIS9001に移行)、同18年には林町工場においてHACCP認証を取得、さらに平成20年7月には林町工場・加工センターの両施設において「SQF2000」認証を取得するなど、以前から商品の品質管理・安全性確保に対する取り組みには積極的に取り組んできた。林町工場では、SQF認証取得と同時に、対米輸出水産食品認定施設としての認定も受けている。HACCP、SQF2000および対米輸出水産食品認定施設の審査登録機関は、いずれもSGSジャパン株式会社である。

同社の主力商品とその取り扱い量は、ブリ・ハマチが約3500トン(約78万尾)、カンパチが約1050トン(約30万尾)、マダイが約600トン(約40万尾)。原料魚は、各産地で養殖された活魚を受け入れ、尾鷲湾に設置された養殖場で蓄養する。主な産地は、ブリ・ハマチは大分・高知、カンパチは鹿児島など。ブリやハマチなど、一部の魚については、現在、尾鷲湾での自家養殖を始めている。「今後は自家養殖の量を増やしていきたい。それができれば、より計画的な生産計画が立てやすくなるし、季節による相場の影響を受けることも少なくなる」と製造部長の玉本卓也氏は説明する。

同社の販売スタイルの大きな特徴として、「お客様が求める商品を、必要な量だけお届けする」という“魚のジャスト・イン・タイム”システムを確立したことが挙げられる。例えば、一口に“ブリ”といっても、「片身をまるごと真空パックにしてほしい」という顧客がいれば、「3つに切って、それぞれをパックしてほしい」「回転寿司のネタとしてスライスしてほしい」という顧客もいる。あるいは、一口に“スライス品”といっても、1パック当たりの重量を指定したい顧客もいれば、スライス1枚当たりの長さを指定したい顧客もいる。尾鷲物産では、そうした細かなニーズに対して、“職人の熟練の手作業”で応えている。

「安全性確保や品質管理に取り組んでいることは、(企業としての強みというよりは)むしろ“食品メーカーとしての最低条件”である。当社の社長は『旧態依然とした衛生意識の低い状態では、これからの食品企業は生き残れない。新工場を建てたことは、企業として“正しい選択”であった。お客様が求めるのは、単に“安全な魚”や“トレーサビリティが確保された魚”ではない。“新鮮で安全でおいしくて安い魚”を求めている。衛生レベルを向上させるためにはコストがかかるし、そのコストを販売価格に上乗せすることは難しい。それでも、裏づけのある(=科学的根拠に基づいた)安全性を確保することが、お客様の信頼を得るためには欠かせない」(玉本氏)。

尾鷲物産では“魚のジャスト・イン・タイム”システムの構築やSQF2000の認証取得など、常に新しい挑戦を続けてきた。また、「人による手作業」と「ラインの機械化・自動化」を効果的に組み合わせる取り組みや、SQF2000の継続的改善、従業員の教育・訓練の徹底などを通じて、安全性確保と品質管理の両立を実現している。このような同社のさまざまな取り組みは、いずれも「どのようにすればお客様であるスーパーや消費者に喜んでもらえるか?」ということを追求した中から生まれたものである。常に、消費者や顧客の視点に立ち、新しいビジネスモデルを模索している尾鷲物産は、これからの水産業界に活気をもたらす企業の一つとして期待される。




 
2009年6月号
◎株式会社梅の花・セントラルキッチン久留米(福岡県)
10年後のマーケット動向を見据え、セントラルキッチンを大幅に改善・改修
〜オンリーワン企業を目指す“湯葉と豆腐の店「梅の花」”の挑戦〜


豆腐や湯葉を中心とした京風懐石料理をリーズナブルな価格で楽しめるチェーンレストラン「湯葉と豆腐の店 梅の花」を全国に展開する株式会社梅の花(本社・福岡県久留米市)。繊細な味わいの料理を提供するために、同社では原材料の選定から、調理、流通、店舗での提供、店舗の空間づくりに至るまで、品質管理・安全性確保に徹底的にこだわっている。

「梅の花」で提供される主要な食品(豆腐、豆乳、豆腐しゅうまい、湯葉揚げ、生麩、ゼリー、季節のアイス、惣菜など)は、久留米市のセントラルキッチンで調理されている。同社は、企業としての5年後10年後を見据えて、このほど大規模な改修および改築を実施した。設計・施工はフードテクノエンジニアリング株式会社。今後も、「梅の花レストラン」100店舗展開への挑戦、新商品の開発、外販事業のスタート、新しいセントラルキッチンの建設予定など、さまざまな“新時代に挑む企業戦略”を計画している。

製造本部・梅の花製造担当統括責任者の尾崎氏は「当社の場合、「セントラルキッチン」と称してはいるが、世間一般の方々がイメージするような“機械化が進んでいて大量生産に対応できる施設”ではない。施設内では多種類のアイテムを取り扱っており(1日に40アイテム近くを取り扱うこともある)、手作業に依存している部分も多い。そのため、正確に言うならば、「店舗の厨房が集合したスペース」「多品種少量生産に対応する大きな台所」と呼ぶ方が的確かもしれない。」と語る。

今回のセントラルキッチンの大規模な改善・改修については、「将来のことを考えると、より品質の良い商品を、安定的に、かつ衛生的に提供できなければならない。「梅の花」で提供する食事は、素材の“旨味”を最大限に引き出すことを考えている。その結果、湯葉や豆腐などは、機械では取り扱えないほど柔らかく、どうしても職人の手作業による繊細な作業に頼らざるを得ない。このように人の手作業に依存しているので、どうしても生産量は限られてしまう。確かに「豆腐」などは、機械化を進めれば、生産量は飛躍的に増やすことができるが、機械作業をできるようにするためには、ある程度の硬さが必要になる。しかし、機械で取り扱える硬さにしてしまうと、「『梅の花』の豆腐の旨味」は表現できなくなってしまう。「梅の花」としてのこだわりを表現するために手作業が必要であるなら、そこは妥協するわけにはいかない。

「梅の花」では、常に「お客様の想像を超えた美味しさを提供して、満足感と感動を与えたい」と考えている。そのため、原材料にもこだわりを持っている。また、感謝がなければ商売は長続きしない。多くの方の協力によって「梅の花」のコンセプトは守られている。こだわりの原材料を確保するには、産地や生産農家・原材料供給業者様の協力が不可欠である。新商品を開発するためには、社内の従業員がアイデアを出し合うことはもちろん、取引業者への試食と情報回収・お客様の忌憚のない感想などを真摯に受け止めている。そして多くの方々への感謝の気持ちを、“美味しい食品を食べてもらう”という形で表現していきたい。お客様の笑顔は、私たちの幸せである。社員全員で力を合わせて、この幸せを共有したいと思っている。」とも語る。




 
2009年5月号
◎サラヤ株式会社(大阪府)
食品衛生インストラクター業務を通じてトータルサニテーションを提供
〜サービス提供者として日本初のISO22000取得〜


衛生・環境・健康をミッションとして掲げ、洗剤メーカーの枠にとらわれずに衛生指導や検査、教育サービスで業界をリードするサラヤ株式会社が2008年12月8日、ISO22000を取得した。審査登録機関はドイツのテュフズードマネジメントサービス(TÜV SÜD Management Service GmbH)。適用範囲は「衛生管理システム構築のサービス提供」で、本社および西日本7営業所と東京サラヤ株式会社本社および東日本7営業所の計16事業所が行う食品衛生インストラクターおよび検査室業務のソフトサービス部署における業務全般である。

更家社長は「1988年からはじめた食品衛生インストラクター制度の食品安全への関わりから非常に大事だと考えた。当社のサービスは非常に業態の広いところでお付き合いさせていただいているので、野菜なら畑から、肉なら農場やと畜場からパッカーや製造加工、流通、販売までフードチェーンのパーツ、パーツをつなぐトータルサニテーションを提供しているという位置づけ。各段階で食品に直接携わる事業者がISO22000に取り組むのは大変結構なことだが、私どもはそれをつなぐことでもっと総合的なサービスを提供できると考えた。」と語る。

また、富田専務は「わたしどものユーザーの興味としての食品安全マネジメントシステムISO22000がある。サービスを提供する当社自身がこれを知らないのは立場上許されないのではないかと考えた。サービス提供の衛生技術としてインストラクター自身がISO22000をしっかり体得して、その上でユーザーにきちんとしたサービスを提供していく仕組みが必要だというのが根底にある認証取得の動機だ。そうすることによって、われわれインストラクターのレベルも上げられるのではないかと。実際、今回の審査で「高いレベルだがもっとシステマティックにできる」という指摘もいただいた。これまで経験的にやってきた技術には自信を持っているが、体系的なカバーができているかというと必ずしもそうではなかった。マネジメントシステムの導入によってねらい通りサービス提供のレベルアップにつながってきている。」と語る。

「インストラクター制度のスタートから20年目と言う節目に皆のがんばりでISO22000を取得できた。これをベースにして、土台の上で元気に羽ばたいてもらいたい。今、当社工場でサラヤバリュープロデューシングマネジメント(S-VPM)活動を行っている。それなりの成果が上がっている。今後はこういう活動とISOが組み合わさり、従業員の行動と衛生管理が一体化してくると効率化や生産性向上にまだまだ成果は上がるはず。洗剤も教育も衛生も、現場は一つなので一体化してくるのがこれからの夢。ユーザーの現場でも、特に小売業のようなサービスの現場に近いところにはVPMをされると良い。またビジュアル化にはさらに力を入れる。映像も使ってビジュアルイノベーションを起こしていく。現場に合わせたカスタムメイドのサービス。これを納得できるコストでどこまで提供できるか考えていきたい。」と今後の抱負を更家社長は力強く語った。




 
2009年4月号
◎株式会社新緑・デリキッチンにしわき(兵庫県)
オール電化厨房でHACCP運用、安全・安心の食事を提供
〜病院給食のセントラルキッチンでISO22000認証取得〜


医療法人社団「正峰会」のグループ内企業の一つで、医療食や介護食、健康食の提供を主業務とする株式会社新緑は2008年10月16日、ISO22000認証を取得した。審査登録機関は日本検査キューエイ株式会社(JICQA)同社が運営するセントラルキッチン施設「デリキッチンにしわき」では、グループ内の各施設(病院、介護老人保健施設など)に設置されたサテライトキッチンに提供する食材の加工および提供(配送)を主業務としている。また、在宅の高齢者や介護を受けている人への食事の提供も行っている。

大山康子社長は「正峰会グループでは、ほとんどの組織がISO9001を取得しており、ISOの効果を最大限に引き出している部門もある。そのため、ISOは、効果的に活用すれば、組織にメリットをもたらす仕組みであることは理解している。そのため、「デリキッチンにしわき」でもISOの考え方を取り入れたいと考えていた。当初はISO9001の認証取得も考えたが、すでに社団法人日本給食サービス協会からHACCP認証を受けていたことや、喫食者が病人や高齢者など抵抗力の弱い人たちであることなどを考慮して、(ISO9001よりも)ISO22000の方が適していると考えた。ISOでも、特にPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回して、常に改善させていくことを重要視している。」と語る。

オール電化厨房の採用についても「かつて、各施設のサテライトキッチンではガス厨房を使用していたが、電化厨房の方が衛生管理が容易にできるし、従業員が快適に働ける環境が維持できると考えた。加えて1995年の阪神・淡路大震災の経験も背景にある。私の自宅は神戸にあったので、震災後の復旧は(ガスよりも)電気の方が速かった。震災の経験は、私にとっては『地震発生を考慮すれば、絶対に電化厨房の方がいい』と考えるきっかけとなった。現在はサテライトキッチンもオール電化に切り替わっている。これからの企業は「人手不足」を課題として抱えることになる。そのため、一つひとつの作業をマニュアル化して、誰でも同じ作業ができるようにしておかなければならない。これから若い社員が増えてくることを考えると、“調理人の経験と勘”に依存した作業では、いずれ立ち行かなくなってしまう。真空低温調理システムを確立することで、誰でも同じ作業ができ、かつ安全な食事を提供できるようになるはずだ。」と語った。

「これまでは認証取得を“目的”としてきた部分もある。そのため、浸透度を高めていくのは、これからの課題である。効果的に運用しなければ、せっかくのISO認証が“宝の持ち腐れ”になってしまう。。また、今後は、セントラルキッチン(デリキッチンにしわき)とサテライトキッチン(各病院・施設の厨房)の連携が、ますます重要になるだろう。また、大山病院に近いスーパーマーケットなどで、「デリキッチンにしわき」の食事を販売する構想も持っている。そこでは、一般消費者を対象として、医食同源をコンセプトにした惣菜や漬物などを販売してみたい。この周辺地域には野菜農家も多いので、地元食材を使い、消費者と生産者がお互いの顔を見られるような料理を提供したい。グループ内にはこの構想を楽しみにしている管理栄養士も多いので、ぜひ実現したい。」と今後の抱負も力強く語る。




 
2009年3月号
◎千葉県食肉公社(千葉県)
牛・豚のと畜・カット施設でISO22000認証取得
〜築年数が経った施設でも、“ソフト運用”次第で安全・安心は確保できる〜


牛および豚のと畜、加工などを主業務とする(株)千葉県食肉公社は2008年10月10日、ISO22000認証を取得した。審査登録機関は(財)日本品質保証機構(JQA)。登録範囲は「牛および豚のと畜・解体」「牛および豚の部分肉並びに副生物の設計・開発、加工および配送」。

このたびの認証は、千葉県食肉公社の施設内で加工業務(枝肉のカットや内臓処理など)を請け負っている関連企業(東総食肉センター(株)、(株)東総臓器、(株)千葉食品、(有)中川商店)と共同で認証を取得したもので、これによりと畜解体から、内臓副生物処理、カット処理に至るまで、安全・安心を担保する仕組みを構築したことになる。

社長の長田光司氏は「認証取得の最も大きな理由は、やはり『安全・安心の食肉を提供しなければならない』という食品企業としての責務を果たすためである。ただし、当社の施設内では管理委託契約を締結した別会社の人たちも作業をしている(例えば、内臓処理やカットの工程など)。そこで、と畜、内臓処理、カットなど、当社の施設内で行われているすべての作業をISOの対象範囲とした。最近、消費者の信頼を揺るがすような事件・事故が起きているが、そのほとんどが内部告発によって表面化している。内部告発は、組織全体として一つの方向を向いていない時に起きるものだと思う。何か悪いことをしていない時でも、経営者にとって内部告発は恐れの対象となる。そこで、関連企業も含めて総勢280人以上の“全員参加”でISO22000の構築を進めることにした。この取り組みを通じて、組織内の全員の意識が、きちんと一つの方向(消費者への安心・安全)を向くようになったと感じている。」とその取り組んだ理由を語った。

また、「最初のうちはISOやHACCPの専門用語について理解するだけでも苦労した。ISOの用語が、組織内の共通言語になってからは、構築もかなりスムーズになった。以前、新しい作業マニュアルが現場になかなか浸透しないことがあった。その時、『ISOでは駄目だ』という意見を述べる人がいた。しかし、ISOが悪いのではない。マニュアルに不満があるなら、見直して、改訂すればよい。現場から意見が出ることは、『より良い仕組みに改善するチャンス』『会社が成長するチャンス』と捉えればよい。ISOが組織を押さえつけたり、縛りつけたりしているわけではない。自分たちでルールを決めて、自分たちで守ることが大切である。トップダウンで組織全体を“押さえつける”のは、それほど難しいことではない。しかし、それだけではISOは組織に浸透しないと思う。認証取得はあくまでも“スタートライン”に過ぎない。今後の運用、継続的改善によって、さらに精度の高いマネジメントシステムとして、しっかりと定着させていきたい。今の時代、一つ重大なクレームが起きれば、企業は大変な打撃を受ける。認証取得には相応のコストがかかったが、問題(製品回収など)が起きた時の損失を考えれば、決して高い経費ではない。また、1年かけて勉強してきた中で、従業員一人ひとりが成長した。これは企業にとって大きな財産になると思う。」とも語る。




 
2009年2月号
◎(株)サラダコスモ(岐阜県)
ISO22000を基盤に“社会的意義の高い企業”を目指す
〜国産ちこり事業を本格化、食料自給率向上や農業・農村の活性化に貢献〜


もやしなどの芽物野菜(スプラウト)の製造・販売を主業務とする株式会社サラダコスモ(岐阜県中津川千旦林)は2008年3月28日、信州第二工場(長野県駒ケ根市赤穂)と本社部門でISO22000認証を取得した(審査登録機関はエコアオーデット株式会社)。

サラダコスモ社は、食品メーカーの使命として安全・安心の野菜の提供に努めるだけでなく、2000年には岐阜県の食料自給率向上と非常時の食糧確保を目的として株式会社ギアリンクスを設立したり、2005年には近い将来の食糧危機を見据えた新しい活動として「国産ちこり事業」に着手するなど、一企業の枠を超えた取り組みも展開している。

「当社は『安全・安心』という社是を持って野菜づくりに取り組んできた。以前から、当社としては、自社で製造する製品の品質と安全性には自信を持っていた。しかし、それはあくまでも主観的なものであって、これからの時代の食品企業は、『安全・安心』について第三者から客観的な評価を受けていることが、とても重要であると考えていた。客観的な評価を受けていれれば、これまで以上に自信を持って『安全・安心』の野菜をお届けすることができる。ISO22000は、当社がこれから将来にわたって消費者の信頼を維持するための必須要件であると判断し、認証取得に取り組むことにした。」と同社の中田社長は語る。

また「第三者の客観的な評価を受けているということで、お客様の信頼度が上がったことは感じる。当社の衛生管理や安全対策について説明する時も、説明しやすくなった。当社は『生産』と『販売』が経営の2本柱であるが、そのうちの『生産』の部分については、ISO22000認証を取得したことによって(従業員一人ひとりの意識が向上し、作業が標準化され習慣化されたことで)安定感が増した。これはISO22000に取り組んだ効果の一つであろう。」とも語る。

今後について、中田社長は「そもそも芽物野菜の発祥は中国にあると言われている。日本人が芽物野菜を食べる習慣は、戦中・戦後に(中国から)伝わったといわれ、それ以降、飛躍的に消費量は伸びた。欧米では、昔は芽物野菜を食べる習慣はなかったが、30年ほど前から芽物野菜の機能性や栄養が着目されるようになり、消費が伸び始めている。その種類も、かつては『芽物野菜=もやし』という認識の時代もあったが、最近はカイワレ大根やアルファルファ、ブロッコリーの新芽、おくらの新芽、空心菜の新芽など、さまざまな種類の野菜が食べられるようになってきた。そのような背景から、グローバルな視野で見れば、芽物野菜の市場は急拡大している。当社は米国にも関連会社(Salad Cosmo U.S.A Co. LTD、カリフォルニア州ディクソン)を設置しているが、これからの食品企業が海外で活動するためには、ISO22000のような国際規格の認証を取得しておくことは必須要件になってくるであろう。」としている。

また、「ISO22000を支える要素について考えた時、私は『精神』『志の高さ』といった部分がきわめて重要であると考えている。HACCPやISOは、あくまでも経営のための“免許証”に過ぎない。免許証を持っているだけで、会社の経営が良くなるわけではない。大事なことは『社会の中でどのように生きていくか』『いかにして“志の高い企業”になるか』である。そして、それを支えるのは社員である。質の高い、モラルの高い社員が、質の高い商品を提供していることは、私にとって誇りである。」と語った。




 

2009年1月号

◎林兼産業(株)・都城工場、都城ウエルネスミート(株)、キリシマドリームファーム(株)
霧島黒豚ブランドを一貫した食品安全マネジメントで提供
〜生産からと畜、成型・加工までISO22000認証取得〜


肉質に定評があるイギリスバークシャー種(英国黒豚)の導入を昭和56年に開始し、100%純粋黒豚の精肉、加工肉を年間約6万頭規模で出荷する林兼産業(株)(本社・山口県下関市大和町2-4-8)は宮崎県都城地区のグループ会社を含む3社(キリシマドリーム(株)(農場)、都城ウエルネスミート(株)(と畜場)、同社・都城工場(加工工場))でISO22000:2005の認証を取得した。農場からと畜場も含めて加工までを一貫したISO22000認証取得は国内初、養豚農場の認証取得も日本初である。

キリシマドリームファーム(株)の高永晋社長は「2007年はじめに林兼産業グループの主力商品である霧島黒豚でISO22000の取り組みにチャレンジすることになった。しかも農場、と畜場、加工工場という生産から出荷までをカバーする取り組みだった。農場のISO22000ということで始めは難しいのではないかと心配していた。特に養豚は全体の生産スパンが長いので衛生管理は難しい(霧島黒豚は通常の豚よりさらに肥育期間が50日程度長く約230日齢で出荷される)。各ステージでの日々の作業を食品製造のようにラインでは説明できない。現場も非常に頑張ってくれたおかげで、キックオフから約1年で認証取得することができた」という。また、品質面でも麦類を主体にすることで、特有の「甘みのあるうまさ」と「白くてしまりのあるおいしい脂肪」を作りあげた。

都城ウエルネスミート(株)は、都城市の食肉センター(と畜場)を運営する民間の指定管理者である。施設設備(ハード)は都城市の管理下にあるが、実際の運営(オペレーション)は同社が行う。同社の中島健一社長は「指定管理者に認定されてまず取り組んだのが生産性の向上。また経費についても、無駄使いを徹底的に見直し、水と電気でかなりの額の削減ができた。」という。また「これからの時代、安全・安心が前提になければ運営は成り立たない。その思いから、公募に申請した段階からISO22000に取り組むことは計画に入っていた。非常にタイミングの良い形で取り組みがスタートした。認証はあくまでも自社の運営のレベルアップのための取り組みで、ことさらにPRするつもりはない。食品に携わる者として当たり前の取り組みだと思っている」。と認証取得に対する思いを語る。

林兼産業(株)都城工場は、枝肉をテーブルミートに処理したり、加工品の原料整形をする部門と、加工品の製造・包装をする部門に分かれている。整形部門では、枝肉から骨を除去し、ロース、かたロース、うで、ばら、もも、ヒレなどの部位別にカット。特に最近は霧島黒豚のしゃぶしゃぶやとんかつ用生鮮肉の販売が好調である。製造部門では、ハム・ソーセージ等の加工品製造が行われている。霧島黒豚熟成ロースは7日間、霧島黒豚熟成ベーコンは5日間、霧島黒豚熟成ウインナーは3日間の漬け込みを行い熟成している。同工場では平成11年3月に総合衛生管理製造過程の承認を取得。すでに10年近くHACCP手法による管理を行ってきた。しかしインテグレーション全体での食品安全マネジメントシステムの構築と、自社のさらなるレベルアップを目的にISO22000に取り組み、平成20年8月8日に同グループの都城ウエルネスミート(株)およびキリシマドリームファーム(株)を含む組織として認証を取得した。

林兼産業グループは未来を見据えている。



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