2006年12月号

◎大阪府・近畿製粉株式会社
業界に先駆けISO22000認証取得、
食品安全・衛生管理を武器に差別化を図る製粉業


 近畿製粉株式会社は2005年9月30日、財団法人日本品質保証機構(JQA)よりISO22000認証を取得した。同社は、平成11年にISO9002(平成14年にISO9001:2000に移行)、平成16年にISO9001-HACCPの認証を取得するなど、以前から食品の品質管理・安全確保に積極的に取り組んできた。ISO22000については、FDIS(ISO22000の最終原案の段階)から、すでに構築および認証取得に向けて取り組んでいた。
 ISOに取り組んだ経緯について、廣瀬讓社長は「当社は『業務用』の小麦粉しか出荷しておらず、一般消費者向けの商品は取り扱っていない。そのため、当社製品のユーザーは、大阪を中心とする製菓・製パン業、製麺業者など「毎日小麦粉に触れるプロの職人」しかいない。ユーザーは、品質面のわずかな変化やバラツキでも、すぐに気が付く。そこで、ISOの品質マネジメントシステムに取り組むことで、作業を文書化して、作業の標準化を図ることにした。誰でも同じ作業ができる――そのような環境が作れたことで、品質のバラツキはなくなり、品質クレームも目に見えて減った」と語った。
 また、ISO9001-HACCPやISO22000に取り組んだ経緯については「消費者の『食の安全・安心』への関心が高まっている。これからの時代は、原材料メーカーであっても、食品衛生に配慮しなければ生き残ってはいけない。『衛生管理を徹底しなければ、企業として立ち行かなくなる』という危機感から、JQAのISO9001-HACCPに取り組むことを決断した。ISO22000はHACCPを含む国際規格である。ISO9001-HACCPを継続的にレベルアップさせることは常に考えていたので、ISO22000に移行したことは自然な流れだったと思う」と語る。
 ISO22000に取り組んだ効果について、廣瀬社長は「“衛生管理の徹底”は、企業としての差別化につながる」「ISO22000では内部コミュニケーション、外部コミュニケーションが重視される。ISO22000に取り組んだことで、それまで以上にコミュニケーションが強化された」といった点を挙げた。同社は今後、ISO9001でもISO22000を運用していく。




 

2006年11月号

◎山口県・安堂畜産株式会社
「家畜の飼養段階から小売店まで」を対象範囲にISO9001-HACCP認証取得

 食肉の加工販売を主業務とする安堂畜産株式会社は2006年5月12日、財団法人日本品質保証機構(JQA)よりISO9001-HACCP認証を取得した。
 山口県周東町は明治初期から食肉産業が盛んな地域。同社は山口県内の牛と畜頭数の約40%を占めている。伝統和牛に注目し、「皇牛(すめらぎぎゅう)」「高森牛」などを飼育、加工。牛の血統から、飼育、加工、流通に至るまでこだわりを持ち、“目先の利益にとらわれない、徹底した顧客満足の実現”に努めている。
 ISO9001-HACCPに取り組んだ経緯や効果について、同社の安堂光明社長は「食肉加工に取り組む以上は『HACCPに取り組んで、科学的根拠に基づいた危害分析を行わなければ、食肉の安全性を確保するのは難しい』と考えていた。どれだけ口頭で『安全・安心です』と主張したところで、それは本当の意味で消費者に安全・安心を提供したことにはならない。安全性を訴えたければ、安全性の根拠や、どのような手順で飼育や加工を行っているのかを、取引先や消費者に説明できなければならない。ISO9001-HACCPは第三者認証である。つまり“目に見える安全・安心”と言い換えることができる。自分たちの構築した仕組みが、客観的な第三者に認めてもらえたところに意義がある」と説明した。
 もう一点、HACCPを導入した目的について安堂卓也専務は「『工程ごとの基準を明確に定める』という狙いもあった。食肉処理では、各工程について菌数の基準がなかった。そこで、2年にわたり蓄積したデータを基に、工程ごとの自主基準を設定した。データを基に基準を作成し、基準を満たすために作業手順を明確にし、文書化した。作業をマニュアル化し、記録を残すことで、ようやく取引先や消費者に安全・安心を説明できる仕組みが整ったと思う」と説明した。
 安堂畜産の経営方針は、製品の品質管理や安全性確保のみに留まらず、牛の血統(伝統)の保存・継承から、地域の循環型農業の活性化まで多岐にわたっている。安堂畜産では“目先の利益にとらわれない、徹底した顧客満足の実現”を目標に、「肥育場から小売店舗まで」を対象範囲にしたISO9001-HACCPの認証を取得した。山口県を代表する“食品安全の先進企業”として今後の事業展開に期待が持たれる。




 

2006年10月号

◎群馬県太田市・三和食品株式会社
ISO22000を効果的に運用してHACCPの“データ分析”と“継続的改善”を強化
〜ISO9001, ISO14001, ISO22000をバランス良く活用するワサビ・ショウガ加工業〜


 ワサビやショウガを原材料とした香辛料等の製造加工および販売を主業務とする三和食品株式会社は、2006年6月に英国の認定機関UKASよりISO22000の認証を取得した(審査登録機関はビーエスアイジャパン株式会社)。同社は2003年にISO9001、2004年にISO14001の認証もビーアイエスジャパンから取得しており、品質管理、環境配慮、安全性確保を徹底した企業活動を展開している。同社の主力商品は、日産約2.5トン(約100万食分)の小袋入りワサビ。主業務である香辛料(ワサビ、ショウガ、ニンニク)以外にも、各種タレ類、大根おろし、紅葉おろし、とろろ、カット野菜、ノンアレルギードレッシングの製造加工など。
 同社では、ISO22000を導入した目的として(1)事業領域の拡大、(2)食品安全の社会意識と実践のさらなる向上、(3)ゴーイングコンサーンの実現、(4)食品安全を求める社会的要求に応える、(5)食品安全のフードサプライチェーンの構築、の5点を挙げている。ISO22000の構築推進の中核を担った石川徹也副社長は「常に『データ分析』と『継続的要求』が求められるのがISO22000の良さだと思う。また、施設を充実させなければ認証取得ができにくいHACCPに対して、必要と判断したときにソフト・ハード的改善を行えば良いという合理性・柔軟性もISO22000の強みだと思う」と説明する。
 ISO22000の取り組みは、2005年5月にキックオフ。それから約10ヶ月で本審査までを終えた。石川副社長は「ISO22000の構築は決してスムーズではなかった」と振り返る。「進み具合に停滞感を感じたこともあったが、従業員全員が参加する毎朝の勉強会を継続したり、現場作業者が参画して書類を作成するなど、構築の過程において従業員の意識は劇的に変化した。その結果、“トップダウン組織”から“ボトムアップ組織”へと変化する土壌を築くことができた」と語る。
 また、石川副社長は「中小規模企業こそ、ISOを活用して合理化や省力化を図るべきだ」と語る。「チャレンジ精神があればISOは取得できる。わが社としては、今後はISO9001、ISO14001、ISO22000を効果的に活用して、『小さくともキラキラ光る食品工場』を目指ざしていきたい」と語った。




 

2006年9月号

◎沖縄県・金秀バイオ株式会社
県産素材にこだわり、妥協ない衛生管理を追求する健康食品製造
〜ISO9001-HACCPからISO22000へ移行〜


 金秀バイオ株式会社(旧社名・株式会社沖縄発酵化学)は、1947年に呉屋秀信氏が創業した「金秀グループ」の一社である。来年度で60周年を迎える金秀グループは現在、株式会社金秀本社、金秀建設株式会社、金秀鋼材株式会社、金秀アルミ工業株式会社、金秀商事株式会社、金秀リゾート開発株式会社、第一産業株式会社、株式会社金秀トレーディング、金秀グリーン株式会社、金秀事業協同組合、そして金秀バイオ株式会社の10社1事業協同組合で構成されている。
 同社は2006年にISO22000の認証を取得した(審査機関は財団法人日本品質保証機構;JQA)。金秀バイオでは、「消費者保護」という食品企業としての社会的責任を全うするために、国際的に有効性が認められているHACCPの導入に取り組んだ。ISO22000の食品安全チームリーダーを務める山里昌永氏は「『国際的に認められている』ということは、消費者や取引先など『誰に説明しても理解してもらえる、納得してもらえる』ということ。一方で、『自分自身を守るため』という目的もあった。PL(製造物責任)対策の有力な手段として、安定取引・取引拡大のための戦術・販売手段として、そして自工場の衛生管理のレベルアップを図るために、HACCPは有効なツール(システム)であると判断した」。
 山里氏は、ISO9001-HACCPおよびISO22000に取り組んだ効果として「HACCPシステムを構築し、運用してきたことで(1)社員やパートに責任感が出てきた、(2)フローダイアグラムに工程をまとめることで管理するポイントが明確になった、(3)製造履歴を確認しやすくなった、(4)製品に対する安心感が増した、(5)営業のセールスポイントとして利用できるようになった等、数々のメリットが得られた」と語った。
 現在、金秀バイオでは健康補助食品GMP認証工場の取得も視野に入れている。“健康と長寿の郷・沖縄”で天然素材の可能性を追求する金秀ファーム、素材の力を最大限に引き出す研究開発や製造に取り組む金秀バイオは、これからも健康食品業界のリーディングカンパニーとして妥協なく挑戦し続ける。




 

2006年8月号

◎鳥取県・鳥取県畜産農業協同組合
全国初のフードチェーンをカバーするISO22000認証
〜認証はスタートライン、継続的なレベルアップこそ重要〜


 鳥取県畜産農業協同組合は2005年12月30日、全国初となる生産(牧場)から加工・販売まで範囲としたISO22000認証を取得した。審査機関は財団法人日本規格協会審査登録事業部。鳥取県畜産農業協同組合は、飼料販売、妊娠牛斡旋、生産指導事業、肉用牛の哺育、肥育、直営牧場事業、肉用牛の処理加工、販売、直売所およびレストランの店舗営業などの食肉加工販売事業から構成される。生産から食肉加工、小売、外食まで、いわば農場から食卓までのフードチェーンすべてを事業範囲としている。
 HACCPへの取り組みについて、代表理事組合長の鎌谷一也氏は「メインの取引先が京都生協だったこともあり『安心・安全な肉を供給していかなければ』という機運は高かった。そこで、『安全な肉を提供していく手段』『徹底した衛生管理の手段』としてHACCPに取り組むことを考えた」と語る。ISO22000については、2004年10月にキックオフ大会を開催、1年2ヶ月で認証取得まで辿り着いた。取り組みの経緯について、鎌谷氏は「京都生協グループのコンサルティングをメインに活動している株式会社コープ品質管理研究所の協力もあって、2003年の冬頃から取り組みを始めていた。ISO22000は、総合衛生管理製造過程(厚生労働省の承認制度)と異なり、生産から販売まで一貫してマネジメントできるシステムである。そのため、当組合が目指すものとしては最適であった」と振り返る。
 このたびの認証取得の効果の一つとして、鎌谷組合長は「ISO22000を取得した企業が、次に別の企業を指導する――といったように、業界全体を持っていくことができれば、鳥取県の畜産物のブランド力は高まっていく。当組合は、それだけの役割を担っていかなければならない」と語った。また、今後の課題について、企画総務課リーダー(食品安全チーム事務局長)の金山民生氏は「過去にHACCPに取り組んでマンネリ化した経験があったが、ISO22000に関しては7SやHACCPにきちんと取り組んでいれば、それほど難しいことはないと思う。認証取得段階は最低限のレベルであって、認証取得はあくまでもスタートである。これから持続的に改善を続けていかなければならない」と語った。鎌谷組合長は「消費者や取引先とのコミュニケーションが大事になっていく」と語った。




 

2006年7月号

◎静岡県・株式会社平松食品
ISO9001-HACCP、ISO22000認証を取得した佃煮製造業
〜日本の伝統食品「TSUKUDANI」の味を世界へ〜


 佃煮製品の製造加工を主業務とする株式会社平松食品は、2005年8月26日に財団法人日本品質保証機構(JQA)よりISO22000認証を取得した。JQAによるISO22000の第一号認証である。
 遠浅の海と河川が海に流れ込む汽水域に恵まれた東三河地方は、昔から国内有数の佃煮の産地として知られている。この地に位置する同社は、大正11年創業の老舗。日本の伝統食品である佃煮の製造加工を主業務とする一方、佃煮文化の伝承と世界的発信にも精力的に取り組んでいる。国際的な食品安全マネジメントシステムの認証取得により、「世界の食卓につくだ煮を」という同社のビジョンを達成する大きな一歩を踏み出した。

 平松食品では、佃煮製造企業としてはいち早く衛生管理や安全性確保の重要さに注目。以前から業界屈指の最新設備を導入した企業として知られていた。現社長である平松賢介氏が代表取締役に就任した平成12年には、将来的なHACCP導入を考慮し、東三河臨海工業団地内に御津工場を建設。この御津工場には、人・食品・資材の動線をしっかりと考慮したゾーニングの考え方が採用されており、当時の佃煮業界においてはかなり先進的な施設として高く評価された。また、同社では、旧工場跡地にアンテナショップ『美食倶楽部』を設立。「美味伝承」「美味創造」「美味献上」をコンセプトに、平松食品と顧客とのコミュニケーション拠点としての機能を担っている。
 平松社長は、今後の展開について「当社は佃煮業界の中でも、比較的大きなシェアを持っている。当社がきちんとした姿勢で(衛生管理などに)取り組めば、業界全体が高く評価していただけるようになる。当社は“町の佃煮屋”から始まったが、全社員が『自分たちは業界の中でも大きな責任を担っている』という自覚を持ちながら、今後も「日本の食文化を世界に広げる」という目標に向かって進んでいきたい」と語った。




 

2006年6月号

◎愛知県・株式会社アイケイ
徹底したデータベース管理による新たな流通スタイル
〜消費者に近い視点から食品の安全向上を〜


 同じ損保会社に務めていた飯田裕代表取締役と鬼塚洋介専務が株式会社アイケイを創業したのは1982年。以来、商品開発・選定から商品発送、エンドユーザーからの問い合わせまで、通信販売に関わる一連のオペレーションを代行する通信販売代行業を展開している。食品事業は年商規模で約30億円。食品のほか、雑貨、アパレル、服飾雑貨、収納家具、CD・DVDなど幅広い商材を取り扱っている。
 一般的に、通販会社はB to C(business to consumer)スタイルが多いが、アイケイではその間にもうひとつBを挟み、組合員を持つ生協や顧客を持つデパート等に企画を提供する。そして顧客データを共有して販売をしてもらうことで、同社からエンドユーザーへ商品を届ける―という、業界用語でB to BCという独特のスタイルを採っている。「通販会社」が備えるべき機能をすべて持ちながらも「エンドユーザー」を持たないという点がアイケイの最大の特徴である。最近では、B to Cスタイルで『ローカロ生活』という自社開発のダイエット食品シリーズの販売を開始。本格販売から半年で年商10億円の商材に成長している。
 同社では、2005年12月16日にLRQA JapanよりISO22000の認証を取得した。同社は環境マネジメント規格であるISO14000の認証も先に取得しており、ISOのメリットや経営への影響などをすでに体験していたため、ISO22000にもスムーズに取り組み始めることができた。飯田社長は「通販では、消費者は物を見ないで購入する。もしも大事故が起きれば『食品のこういう買い方はできない』とマイナスイメージを持たれることになる。食品を取り扱う企業として、流通させる食品の安全性を絶対確保するためには、仕組みとしてシステマティックに食品安全を管理できるISO22000が最善の選択肢と判断した。また、ISOを活用することで社員が成長するのを見るのも楽しみの一つである」と語った。「流通業界は消費者にもっとも近い位置にある。消費者に近い視点に立ち、製造業者のレベルアップにつながるような取り組みをしていくことが、流通業界の意義であり責任である」と考える同社。将来的には、仕入先と同社の間でISOの相互監査ができる仕組みを構築したいと考えている。「ISO22000はフードチェーン全体を包括する規格。フードチェーン内のすべての組織が相互に監査し合い、取引先とともに成長していくことが目標」。




 

2006年5月号

◎兵庫県・株式会社籠谷
消費者に「笑顔」で食べていただける卵づくりを
〜鶏卵分野で兵庫県版HACCP第1号認証を取得〜


 鶏卵の加工および鶏卵加工食品(主に業務用素材)の製造を主業務とする株式会社籠谷は、直営農場からGPセンター、店頭に並ぶまでの工程に30のチェック項目を設け、農場から食卓までを一つの線で結ぶ食品衛生管理プログラムを確立し、平成18年1月に鶏卵分野として初めて兵庫県食品衛生管理プログラム(兵庫県版HACCP)の認定を取得。認定施設で生産管理された鶏卵商品名『笑顔』として、2月より兵庫県下で販売開始した。
 籠谷はもともと品質管理に対する意識が高く、平成14年には兵庫県内のGPセンター(鶏卵選別包装施設)で初めてISO9001の認証を取得している。「鶏卵は食品としてよりも、どちらかといえば畜産物として扱われることが多かった。しかし、養鶏場に近ければ近いほど懸念される危害も多いため、食品と同水準の徹底した衛生管理システムの必要性を感じていた。そのような中、兵庫県版HACCPの認定範囲がGPセンターと液卵製造施設にまで拡大され、これを機により安心・安全な製品を消費者に提供するための仕組みづくりを目指した」と同社の営業グループゼネラルマネージャーの小畑成久氏は話す。
 鶏卵分野では初の認証事例であったため「GPセンターを見たこともない」という行政官もいるような状況からのスタートだった。しかし、以前からしっかりした衛生管理を行っていたという「ベース」があったおかげでHACCPの導入は比較的スムーズに進んだ。さらに、高い衛生レベルが要求される加工食品分野での経験とノウハウも、HACCPシステムの構築に非常に役立ったという。HACCPシステムの土台となるSSOP(衛生標準作業手順)などは、既存の仕組みをベースに実際にGPセンターで働く従業員が中心となって作成するなど、「トップダウン」ではなく「全員参加」の姿勢で取り組んだことで、効果的に従業員の意識レベルを上げ、現場の雰囲気を変えることに成功した。鶏卵・液卵分野の兵庫県版HACCP認定取得第一号となったことで、「構築したシステムをしっかり守っていかなければ」という良い緊張感が現場に生まれ、さらなるレベルアップにつながっている。「トップはすでに『次はISO22000を』目指している。現段階は、HACCPによる管理体制の強化とシステムの完全な定着を徹底しているが、その取り組みが次の目標にうまくつながるよう一層の努力をしていきたい」と小畑氏は語った。




 

2006年4月号

◎滋賀県・大塚食品株式会社 滋賀工場
現代人の野菜不足改善に貢献する乳酸発酵野菜飲料『野菜の戦士』
〜総合衛生管理製造過程で徹底した衛生管理を実現〜


 大塚食品株式会社の滋賀工場は、関連会社である大塚製薬株式会社の主力商品である「ポカリスエット」や「アミノバリュー」などの清涼飲料水を中心に製造を行っている。敷地内にある四つの工場のうちの一つ「CVD工場」は、8〜9種類の野菜を植物性乳酸菌(Pediococcus pentosaceus)で発酵させて作られる生菌タイプの乳酸発酵野菜飲料『野菜の戦士』の専用工場。同工場では、2003年5月8日に厚生労働省の総合衛生管理製造過程の承認を取得した。
 現代人の絶対的な野菜不足の解消に貢献するために開発された「野菜の戦士」は、日本人が伝統的に摂取してきた味噌や醤油などの伝統的な野菜発酵食品中に存在する植物性乳酸菌を使用した初めての飲料である。生きた乳酸菌が一本あたり500億個含まれており、腸内環境を改善しながら変異原物質を体外へ排出し、免疫機能を高める。また、乳酸発酵によりまろやかさが生じるため、通常の野菜ジュースよりも飲みやすく、おいしく仕上がっている。さらに、乳酸菌が製品内に存在するため、他の菌の増殖を防ぐ効果も期待されている。そのため、甘味料・香料・保存料などは一切使用されていない。
 製造工程内でCCPに設定されているのは原料野菜の殺菌工程である。通常、厚生労働省の定める製造基準に従うならば、野菜に乳酸菌を加えた後に加熱殺菌工程が存在する。ところが「野菜の戦士」は、殺菌した野菜汁に乳酸菌を加え発酵、冷却してそのまま充填という製造フローとなっている。加熱殺菌を行ってしまうと、有用な乳酸菌まで殺菌してしまうことになるからだ。同工場では、「この特異的な工程が食品衛生法で定められた清涼飲料水の製造基準に合致しない」というジレンマを「安全性が担保されていれば製造規準と異なる方法で製造することができる」という総合衛生管理製造過程の適用除外を利用することで解決した。承認品目が「野菜汁を殺菌後、乳酸発酵させ、密栓・密封し、10℃以下で流通させる飲料(pH4.5以下)に限る」という、清涼飲料水の承認施設の中でも他に例を見ないものであるのはこのためである。さらに、アセプティック(無菌)発酵・充填ラインを採用することで、保存料を一切使用していないにも関わらず、通常のチルド製品より長い賞味期限(30日間)を実現できたのだ。




 

2006年3月号

◎東京都・山陽商事株式会社
国内茶業界で初、静岡工場でHACCP認証取得
〜妥協ない品質管理体制を構築、海外進出も視野にHACCPを運用〜


 緑茶や中国茶などの加工・販売を主業務とする山陽商事株式会社は2005年9月30日、同社静岡工場(静岡県小笠原町)でHACCP認証を取得した。審査機関は日本海事検定キューエイ株式会社(NKKKQA)。同社は、国内茶業界では初めてのHACCP認証取得工場である。認証の対象範囲は、リーフ製品、ティーパック・シャーパック(水出し・お湯出し兼用)、シャーパック製品(お湯出し専用)、だしパック製品の製造。
 同社では、水出し用のお茶に対する安全性の担保のためにHACCPに取り組んだ。HACCPに取り組んだ経緯について、服部敏高社長は「『これからは水出し茶の安全性を担保できる工場にしなければならない。新工場を建てるなら、まずはゾーニングの構築が不可欠』と考えた。ただし、ハード面ができても、ソフト運用ができていなければ意味がない。大事なことはソフト運用である」「取り組み始めた当初は、厳しい指摘も受けた。今となっては基本的な項目でも、当時は理解するのが大変だった。それでも、工場の幹部や従事者とともに4年かけて、工場の品質管理(400項目超)マニュアルが作られ、2年前より日々運用するに至った。この品管運用は、工場内環境から従事者の衛生管理に至るまで、HACCP構築のための基礎となった」と振り返る。
 今後の展開について服部社長は「衛生管理を徹底する理由の一つとして、海外に日本茶を輸出していきたいという構想がある。日本茶は長い歴史がありながら世界にあまり進出できていない。HACCPは科学的根拠に裏打ちされた食品安全性管理システム。HACCP認証を取得した企業であれば、海外からは『安全証明が構築されている企業』と理解してもらえる」「今後の茶業界は、量販店への直販や通信販売、ネット市場などの新しい販路に目を向けていくことでまだまだ伸びるだろう。そのためには、これまで以上に衛生意識を高く持つ必要がある。業界全体で見れば、まだまだHACCPの取り組みまでは距離がある感じも否めないが、近い将来、業界全体が衛生管理に配慮した製造に目を向けるようになる。当社の取り組みが、業界全体のボトムアップのきっかけになればよいと思う」と語った。




 

2006年2月号

◎長野県・株式会社ミールケア
「予防医学」を視野に入れた、新しい価値観の受託給食業を目指す
〜絶大な顧客信頼を維持する企業姿勢に迫る〜


 医療・福祉施設の事業所給食の受託製造を主業務とする株式会社ミールケアでは、2000年4月に財団法人日本品質保証機構(JQA)のISO9001-HACCP認証を取得するなど品質管理・安全確保の徹底を図っていた。しかし、2003年1月に福祉施設を受託する事業所1施設でノロウイルス食中毒が発生。企業として危機的状況に直面した。しかし、迅速な是正処置や情報提供などへの取り組みが奏を功し、事件発生の打撃から回復。むしろ事件発生前よりも顧客を増やすことになった。2003年からは、毎冬「ノロウイルス徹底攻略セミナー」を主催するなど同業他社への情報提供にも積極的に取り組んでいる。
 顧客信頼の回復に成功した一因を、関幸博社長は「持っている情報“すべて”を“速やかに”出すと即座に決断できたことではないか。特に情報公開と是正処置の速度を可能な限り速くしたことが大きかった。もちろん、日頃から従業員が衛生管理に真摯に取り組んできたことも大きかったと思う。結果的に『ピンチをチャンスに変える決断』となったが、心底勇気の要る決断だった」と振り返る。「『受託給食業者がHACCPに取り組むのは当然のこと』と認識している。ただし、いくら最新鋭の機械を導入したところで、HACCPを運用するのは結局“人”である」。「実際にHACCPを動かす現場の従業員、末端従事者も含めてわかるような衛生教育が最も大事。末端従事者を大事にできない企業にHACCPはできない。『管理者しかHACCPを理解していない』状態は非常に危険である」と従事者教育の重要性を強調した。「これからの受託給食は『予防医学』の分野を目指すべき。『健康である人が食べる食事』『いつまでも健康で長生したいと思う人たちが食べる食事』という価値観を作り、実際にそうした食事を提供していきたい。『健康でありたい』と望む人たちのための新事業を進めていく」。




 

2006年1月号

◎新潟県・株式会社ブルボン
品質管理・安全保証をさらに徹底、高級洋菓子店の味を開発、提供し続ける
〜今後は“健康素材としての菓子”の可能性も追求〜


 株式会社ブルボンは財団法人日本品質保証機構(JQA)のISO9001-HACCP認証を取得。大正13年の創立以来、81年の歴史を持つ同社は「菓子の専業メーカーからの脱皮」「潤いや癒しのある生活への貢献」を目指し、最近ではデザート部門への参入、生活習慣病予防のための機能性食品や健康食品の開発など、幅広い事業を展開している。
 同社の品質管理や安全性確保の体制について品質保証部長兼安全衛生管理室長の浅野和男氏は「当社では、洋菓子(半生ケーキ)やココアなども取り扱っている。そのため、平成12年に発生した加工乳による大規模食中毒は品質管理体制を見直す一大転機となった。事件を契機に、それ以前からの徹底した品質管理の“さらなる強化”を目指した。平成12年に社長の決断で品質保証部内に内部監査を主業務とする製造監査課を設置。製造監査課を中心に『決められたことが現場で正しく行われているのか』『現場をチェックする品質管理部門が正しく機能しているか』を、これまで以上に厳格にチェックすることにした」。ISO9001-HACCP導入により「従業員の意識が明らかに変わった。従業員一人ひとりの“安全”に対する意識が飛躍的に向上した。また、作業が標準化されたので、従来であれば経験が長い“職人”しか担当できなかった作業が、誰が来ても同じように作業できるようになった。また、PDCAサイクルを回すことによって、自分たちに欠けていた部分が見付かり、効果的な是正ができるようになった」。「これから高齢化社会の時代を迎える。誰もが“健康長寿”でいられるよう、我々は“お菓子”という分野から貢献していきたい。これからも『食べて楽しい菓子』『心が癒される菓子』を提供していきたい」と語った。



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